仮庵

書きとめる仮住まい

四十年後に会いましょう

年の瀬である。

いつからかクリスマスの音も師走の音も聞こえることがなくなった。音楽ではなくて、なんというか心から鳴っている、そういう音。

前に聞こえていたそんな音が聞こえなくなったのは、わたしが子どもじゃなくなったからだ。大人になった時はどんな音がするのだろうか。

今は音がしない。いつもどおりに在り、いつもどおりの生活音が耳に聞こえるだけ。たぶん、自分の心の音に耳をすますよりも、周りの音をよく聞く時期なのだと思う。それもきっと、いつか懐かしく思うのだろう。

 

酒瓶片手に実家に向かう車中、雪道に足元をすくわれぬよう歩く老夫婦を見る。

あの人たちにはどんな音が聞こえているのだろうか。まだわたしの知らない音がするのだろう。

そんなことを思う。

 

「もし、六十歳になって、まだ結婚してなかったら、結婚しようねー! 面白そうだし」

なんの打算もなく、ほんとうにただの馬鹿正直で言ったことばは、決定的な一撃だったらしくのちに「オレは、この人と結婚することに決めた」とのことだった。(四十年後に設定したのは、まだ自室に引きこもってひとりでゲームがしたかったからですよ)

 

なぜかはっきり未来が見えたから言ったことばだった。あのばっ!と目に浮かんだ未来で、今日見た老夫婦のように連れ立って歩くのが、わたしの夢なのだ。(まだオットには言ったことはない)

その時わたしはなにか子どもの頃のような……でも違うワクワクする心の音を聞きたい。

そして「なんか、ワクワクするね!」って言いたい。

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