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仮庵

書きとめる仮住まい

果たされなかった目標と、その後

雑記

むかしむかしのおはなし。
部活の勧誘会みたいなものが四月だかに毎年おこなわれる。部長がまえに出ていって部活をアピールし、入部をうながすながれ。

弱小部の部長だったわたしは、なんら実績がないというのに「全国狙います!」みたいな熱いことは、ぜったいに言えないよなあ。とおもいながら、勧誘会がある数日前の夜に机にむかっていた。

さて、どうするか……と白紙の原稿用紙を前に、しばらく考えてありのままを書くことにした。
「われわれは、部活動を通じて日々の“経過”を大切にしています。それはなにかというと……」みたいなことを、長々と書いた。

なぜなら、まえもって先生に提出しなければならない原稿が原稿用紙四枚だったからだ。もしかしたら、かってに長々と書いたのかもしれないが「書いてきて」とだけ言われて渡されたので、もらった四枚分をきっちりうめた。

結果は新入部員ゼロだった。勧誘失敗である。落ちこみはしなかった。まあ、それでもいいやぐらいな気持ちだった。

書いた内容も忘れたしその原稿をどこにやったのかも忘れたころ、他クラスのめちゃくちゃコワイ野球部の先生がどこで入手したのか学級通信に「読め!」と全文をのせたというはなしを聞いた。

先生が何をおもってのせたかは分からないものの、書いたものがそういうことになってすなおにうれしかった。新入部員獲得という目標は失敗だったが、だれかに届いた。

「結果だけが大事なんだ」とのちのち言われるようになると、あのとき書いた原稿をおもいだす。

ほんとうにあれで、よかったのだろうか? とおもったりもするのだけれど、それでもあのとき書いた「経過」のはなしは自分から出たほんとうのことばだった。「経過」を発見してからはノリノリで書いた。そうそう! 感じていたことはこれだ! と。

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三年生のさいごに、答辞らしきものを書く代表のひとりになった。あの勧誘失敗原稿がきっかけとしかおもえない。

生徒選抜からは外れたけれど(ああいうのは人気者か頭のいい者が選ばれるから、はれものだったわたしは無論はずれる)先生選抜で選ばれた。

わたしとは比べものにならない頭のいい同級生たちと書いていく作業はとてもおもしろかった。いま思うとブレストが機能し、わいわいとパーツを作り、ときおり組みなおし、こまかい言いまわしにこだわった。
六時間くらいみっちりと作業したが、若さもあって疲れることなくただただ満ちたりていた。

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おもいだせるかぎりの断片でよくよく考えてみると、どちらの原稿もいまブログで書いているスタンスとさほど変わらない。

あの原稿のゆくすえがひとつのよき理由となり、いまもこうして書いているのかもしれない。

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