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仮庵

書きとめる仮住まい

パスカルの三角形

 わたしには、学生時代にやり損ねたことがたくさんあるのだが、そのなかの一つが数学だ。


 とにかくわからなかった。「それはどこから出てきた話なのですか。そもそもそれはなんなのですか。そのことばの意味はなんですか。だれがどうやってみつけたんですか」


 えらいこっちゃえらいこっちゃと頭の中に混乱と妄想が入り混じりはじめると、授業がなにも入ってこなくなる。わけのわからないクリーチャーたちの不条理劇場をみるのはそれはそれで面白かったが、点数にはつながらない。


 いまなら腑に落ちるまで調べたり、手を動かしてみればよいと思うが、当時はそんなことを思いつきもしなかった。


 腑に落ちていないので、テストがおわれば忘れる。忘れてしまったが納得していないし知りたいので、改めて勉強するのが大人になってから普通のことになってきた。

 

 いまさら勉強してどうするの? とよく笑われるのだけれど、知りたいし楽しいんだからいいじゃない。オットもそう言うし、わたしもそう思う。

 

 

 「はじめまして数学 リメイク」という本を読んでいる。
 その中に、パスカルの三角形がでてきた。


 あれ? これなんだか見たことがある。
 記憶の箱の奥深く、とりだすには苦労するくらい深淵に手を突っ込みながらその既視感を掴み出すためのめり込むように読んだ。


 パスカルの三角形と、フラクタル図形。
 子どもの頃の、この規則性は気持ちいいと紙片に書きまくっていたのがこれらだった。なんとなくはじめたことだった。


 そんな名前だったんだ。名前は知らないけれどただただ無邪気に遊んだ懐かしき友人に再会して、いまさら名前を知ったような気分だ。


 解答を書いて提出する数学のテストは本当にできなかったけれど、いつぞやの楽しみが実は数学だったんだ、知ると嬉しいというよりも安堵のような気持ちがじんわりひろがった。

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